手っ取り早く言ってしまうと、父から私に受け継がれるべき職は線維加工業(革含む)である。K市という土地柄も相まって伝統的な職人芸と思われることが多いが、苛性ソーダや次亜塩素酸ナトリウムや硝酸や硫酸を扱う割りと化学寄りな仕事である。現在のメインも本皮に化学薬品の反応で模様を付ける加工。藍染や木染といった天然染色など何処吹く風だ。
K市では、マクロな視点でみれば日本では、繊維産業の伝統的手工業は失われつつある。要因は色々あろうが、やはり少子化と大量生産できる合繊の存在が大きいか。絹に至ってはほぼ100%輸入に頼っている始末。お蚕様という言葉もあるのにどうしてこうなった。
少しずつ、仕事の手解きを受ける。伝統工芸では無いが、一朝一夕で身に付くものではない。作業そのものは単純だが、父の加工したものと私が加工したものとでは品質が雲泥の差である。数をこなして体で覚えるしかないのだけど。
そして一日に大量に働けない。鬱々とした気分は晴れない。立ち仕事なので、以前骨折した腰骨が痛む。人と一緒にいる時間が増えたので幻聴が激しくなった。次回の医者になんて言おう。
働かなければ生き残れない。そんな龍騎は嫌だが龍騎の主人公は働いていたなそういえば。